新世代の俊英、オリバー・ラリックの個展「TF」が日本初開催|Kaikai Kiki Gallery
LOUNGE / ART
2015年12月25日

新世代の俊英、オリバー・ラリックの個展「TF」が日本初開催|Kaikai Kiki Gallery

Kaikai Kiki Gallery|カイカイキキギャラリー

ポストインターネット世代の新鋭

オリバー・ラリックの個展を日本初開催

「Kaikai Kiki Gallery(カイカイキキギャラリー)」は、オーストリア出身の注目アーティスト、オリバー・ラリック氏の個展を、2016年1月23日(土)まで開催している。「ポストインターネット」世代のアーティストとしての現代的なセンスに溢れながら、同時に歴史的な視覚文化を射程に置くラリック氏の作品は、欧米を中心に高い評価を得ているが、日本での個展は初開催となる。

Text by TSUCHIYA Motohiro (OPENERS)

“何かになろうとする”複製の可能性を示す「TF」の作品

1981年、オーストリアのインスブルックに生まれたオリバー・ラリック氏は、現在、活動拠点をドイツ・ベルリンに置き、創作活動をしている。作品は立体作品や映像、ウェブベースのプロジェクトなど多岐にわたり、多様な形式から複製や変形のあり方を追求する。

Kaikai Kiki Gallery|オリバー・ラリック個展「TF」

Kaikai Kiki Gallery|オリバー・ラリック個展「TF」

今回の個展の題材として選ばれている、「TF」とは“transformation art(トランスフォーメーションアート)”を指しているという。展示作品では、映像や美術のようにコピーされ、またコピーされる過程で創作がくわわり、形質が変化していくさまを捉え、オリジナルが本来もっていた美点、メッセージの危うさを表現している。

「TF」を題材とした、映像作品を中心に展示される今回の個展だが、新作の立体作品も展示される。個展にゲストキュレーターとしてかかわる、アンドレア・ニュースティン氏によれば、展示作品のなかで注目してほしい新作が、16世紀につくられた『Transi』という葬儀像を、石膏で複製したものを、さらにデジタルスキャンして出力したという『Transi de René Chalon』。

オリジナルの『Transi』は、フランス・ロレーヌ地方の聖ステファノ協会が、当時の宗主であるオランジュ公の葬儀にあたり、用意した葬儀像。オランジュ公の死後に彼を腐敗していく骸骨として表現したポートレートスカルプチャーで、その手には自らの心臓を握って高く持ち上げている。当初は、像の手のなかの小さな聖遺物箱に、オランジュ公の心臓が収められていたという、厳かな像だ。

ところが、ラリック氏が作品制作にあたり立体スキャンしたのは19世紀に石膏をもちいて複製された心臓なしのバージョン。オランジュ公という当初の肉体の持ち主の意思をは無関係に、葬儀像がつくられ、さらにコピーを重ねてあらたなメッセージをもたらされていくスケールを、この作品で表現している。

ニュースティン氏は、「ラリックにとって、レプリカまたは複製は変化の過程であり、可能性を秘めた状態にありつづけることであり、ずっとつづく何かになろうとしている状態なのです。今回の展示で、何かになろうとしている「TF」を体感してもらえれば」と語る。

いま国際的にもっとも注目を集めるアーティストのひとり、オリバー・ラリック氏の作品に触れることができる貴重な機会、ホリデーシーズンの喧騒を離れ、静かにアートを楽しみたいというひとにはおすすめのアートイベントだ。

オリバー・ラリック個展「TF」
会期:2016年1月23日(土)まで
時間:11:00-19:00
休館日:日曜・月曜・祝日
※年末年始の閉廊日についてはウェブサイト(http://www.kaikaikiki.co.jp)でご確認ください
場所:Kaikai Kiki Gallery
東京都港区元麻布2-3-30 元麻布クレストビルB1

問い合わせ先

カイカイキキ

http://www.kaikaikiki.co.jp

           
Photo Gallery