東京モーターショー 2015 リポート|NISSAN
CAR / FEATURES
2015年11月5日

東京モーターショー 2015 リポート|NISSAN

Nissan|日産

東京モーターショー 2015 リポート

2020年を見据え、多様な提案をおこなう日産

2020年の実用化に向けて開発を進めている完全自動運転技術を盛り込んだEV「IDSコンセプト」が、今回の東京モーターショーの話題のひとつとなった日産。おなじ2020年へ向けて、ゲームから抜け出た次世代のスポーツカーと、2020年に免許を取得する若い世代のユーザーをターゲットとしたデジタルガジェット的なコンセプトカーも発表している。5年後にむけて多様なクルマを提案する日産ブースを小川フミオ氏がリポート。

Text by OGAWA FumioPhotographs by ARAKAWA Masayuki

自動運転とドライビングの楽しみが同居

白を基調とした(相変わらず)クリーンでインテリジェントな雰囲気が、日産自動車のブースの特徴だ。コンセプトカーを中心としたショーの目玉は、大きくいうと、2つに分かれているように思えた。ひとつがスポーツ、もうひとつが自動運転だ。

「2020年までに革新的な自動運転技術を複数車種に搭載予定である」とカルロス・ゴーン社長兼CEOが、2013年8月に発言したのを受け、いらい、自動運転技術開発を連綿とつづけてきたという日産自動車。そこから導かれたのが「ニッサン インテリジェント ドライビング」だ。概念としては「ある時にはアクティブに運転を楽しみ、そしてある時には運転から解放され、より創造的な時間を楽しめるものこそが、日産自動車の自動運転車であるという結論に達したのです」(日産自動車)となる。

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Nissan IDS Concept

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自動運転技術の象徴として発表されたのが、「IDSコンセプト」。近未来の自動運転のプロジェクトのコンセプトモデルである。60kWhのバッテリーを搭載した電気自動車だ。見るべきところは、パイロットドライブモードとマニュアルドライブモードの設定にある。前者は自動運転。「交通ルールを理解したAI(人工知能)が、道路や交通状況、道路標識などを正しく理解し、その先の状況を予測。安全でスムースな自動運転をおこないます」と説明される。

自動運転中は、乗員は運転を完全にクルマにまかせていられるが、マニュアルドライブモードを選択すると、モニターのディスプレイをはじめ、ドライブを積極的に楽しめるような雰囲気に変わることが想定されている。「安全に気持ちよいドライビングを実現し、クルマを運転する楽しみを多くのひとに感じてもらいたい」とする、日産自動車の考えが、2つのモードを1台のクルマに“同居”させるコンププトを導き出したといえる。

ドライブを楽しみたい気持ちをもつひとは、しかしながら、若い世代には珍しくなるかもしれない。そう考える日産自動車は、ユニークなモデルをつくりあげた。

Nissan|日産

東京モーターショー 2015 リポート

2020年を見据え、多様な提案をおこなう日産(2)

日産が考えるあたらしいユーザー層、シェア ネイティブ

シェア ネイティブ。日産自動車が「次世代カスタマー」と位置づけたユーザー層の名称だ。特徴は2つ。2020年に運転免許をとる世代であること。もうひとつは、従来のようなクルマへのパッションをもたないことだとか。その層をターゲットと想定して開発されたのが、コンセプトモデルの「テアトロ フォー デイズ」だ。

「スピード感、力強さ、プレミアム感など、私たちが当たり前のようにデザインに取り入れてきた付加価値は、シェア ネイティブが求めているものとは必ずしも一致しないと考えました」。そう語るエグゼクティブ デザイン ディレクターの田井悟氏の言葉が紹介された。

そのひとたちを取り込むことを狙ったテアトロ フォー デイズのインテリアは、真っ白なシートとわずかな操作類だけで構成されている。

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NISSAN Teatro for Dayz

その白い室内を「フューチャー キャンバス」と日産自動車は名づけた。使い方を限定する物理的なスイッチ類はなく、空調やオーディオなどの操作は、ボイスコントローラーやモーションセンサーでおこなうという。メーター類やナビゲーションは運転中には表示されるが、クルマが止まれば姿を消す。スマートフォンなどをつなぐことで乗員同士が情報やエンタテインメントを共有する。走るというより、つながるための道具。いわば、なにもなくて、なんでもできる空間、それがテアトロ フォー デイズだ。

テアトロ フォー デイズやIDSコンセプトから離れた場所に置かれつつ、負けないぐらいの存在感を主張していたのが、「コンセプト2020 ビジョン グランツーリスモ」である。こちらも「2020」がキーワードだが、テアトロ フォー デイズとはアプローチが真逆。自動車好きに積極的にアピールすることを狙った、レーシングカーのようなスポーツクーペだ。

キャビンは、いわゆるカンチレバー(方持ち)ルーフといって、リアクォーターピラーのみボディ同色。Aピラーがブラックアウトされたスタイルは、GTRでおなじみのものだ。リアコンビネーションランプもGTRを思わせる丸型4灯。このショーカーは、テレビゲーム「グランツーリスモ」に登場するモデルを具現したものだが、ひょっとしたら、次世代あるいはその次の世代のGT-Rの萌芽がこのなかにあるのかもしれないと期待させる。

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NISSAN Concept 2020 Vision Gran-Turismo

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実際、独特のレッドに塗色されて、すご味を効かせたコンセプト2020 ビジョン グランツーリスモは、来場者の注目を大きく集めていた。車体を美しく見せる展示ブースの作り方も上手である。このところ同社が力を入れている「マーチ」「ノート」「ジューク」「フェアレディZ」に設定したNISMOコンプリートカーの背後で、まるで玉座に座ったかのように鎮座していたのが印象的だ。

「当社は、2020年までに高速道路と市街地を走行できる自動運転車を商品化しますが、それに先駆け「ニッサン インテリジェント ドライビング」の数々の技術を順次、新型車に搭載してゆきます。2016年には、混雑した高速道路上において、単独レーンでの安全な自動走行を実現するトラフィック ジャム パイロットを採用した、パイロットドライブ 1.0を投入します」。ゴーン社長兼CEOはプレスデイのスピーチでそう述べた。自動運転(プラス電気)と、スポーティカー、日産の目指す先は多様だ。

           
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