東京モーターショー 2015 リポート|Honda
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2015年11月4日

東京モーターショー 2015 リポート|Honda

Honda|ホンダ

東京モーターショー2015 リポート

パワーオブドリームをかたちにするホンダ

新型「NSX」や「シビック タイプR」など市販化が近いスポーツモデルが話題を集めるいっぽうで、あたらしい燃料電池車「クラリティ フューエル セル」やパーソナルモビリティの展示にも力を入れるホンダ。企業スローガンのパワーオブドリームをかたちにしたそのホンダブースを、小川フミオ氏がリポート。

Text by OGAWA FumioPhotographs by ARAKAWA Masayuki

スポーツカーメーカーのDNAをもったスポーツモデルたち

スポーツカーから移動支援のパーソナルモビリティまで。あるいは、カブからジェット機まで。本田技研のブースは(さすがにホンダジェットはないが)じつに多彩だ。3モーターのハイブリッドスポーツカー「NSX」の市販モデルや、スポーツモデル好きが期待している「シビック タイプR」が、2015年からF1に参戦している本田技研のスポーツカーメーカーのDNAを持ったモデルとしてまっさきに紹介された。

本田技研のコーポレートカラーである赤でフロアが塗られた同社のブースは、二輪と四輪と2つのジャンルで数々のモデルが展示された。なかには、「コーナリングの楽しさと安定感を両立したスポーツハイブリッド三輪」(本田技研)と謳う「ネオ ウィング」や、モトGPクラス2連覇を達成したRC213VのV型4気筒(公道仕様)エンジンを搭載した「ホンダ プロジェクト2&4 powered by RC213V」も。二輪と四輪のクロスオーバーは、ホンダだからこそのコンセプトといえる。

Honda NSX|ホンダ NSX

Honda NSX

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Honda CIVIC TYPE R

同社が掲げるスローガン「パワーオブドリーム」は、記者発表時の八郷隆弘代表取締役社長社長執行役員がスピーチのなかで再三強調していたことで、その象徴のひとつと見受けられたのが、前出のホンダ プロジェクト2&4 powered by RC213V開発にかんするパネル展示だ。

二輪と四輪の融合というテーマを基に、日本をはじめとする海外のデザインスタジオのデザイナーたちに競作させたプロジェクトだったようで、今回かたちになった米国人デザイナー、マーティン・ペタースン氏の作品にくわえ、数々の楽しいイメージスケッチが展示されていた。

3.5リッターV6エンジンを後輪の前に搭載する2シーターという点は、初代とおなじレイアウトを採用したNSX。しかし新型は、そこに電気モーターをくわえたうえに、前輪も左右独立してモーターで駆動する4WDだ。

左右駆動輪に伝達する駆動力の配分をコントロールするトルクベクタリング機能によってコーナリング性能の飛躍的向上を狙っていると、本田技研では誇らしげに説明する。

Honda 2&4 powered by RC213V|ホンダ 2&4 powered by RC213V

Honda 2&4 powered by RC213V

ランボルギーニも2014年、将来のスポーツカーのかたちとしてモーターで左右前輪を制御するコンセプトを発表している。しかしまだ生産化は未定と、2015年秋にインタビューしたさい、同社のシュテファン・ウィンケルマンCEOは語っていた。生産立ち上げは2016年からと予定より遅れているものの、NSXこそ、新世代スポーツカーの先陣を切るモデルになりそうだ。システム全体で573馬力といわれる新型NSX。米国ではアキュラブランドで販売されるときの価格は約1,800万円ともいわれる。

あたらしさという点では、「唯一の5人乗り」を謳う「クラリティFUEL CELL」に注目が集まった。

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東京モーターショー2015 リポート

パワーオブドリームをかたちにするホンダ (2)

ホンダの主張が詰まった次世代FCV

燃料電池車の開発をつづけ、これまでに「FCX クラリティ」を公道で走らせてきた本田技研が「クラリティ フューエル セル」の販売を発表した。伸びやかで、エレガンスを強く感じる大型ボディは、シトロエンが次世代の大型セダンを作ったらこうなるかな?とクルマ好きに想像の楽しさを味わわせてくれるものだった。クラリティ フューエル セルは、2016年3月に766万円でリース販売される。

記者発表の場では、八郷社長は、「つくる、つかう、つながる」というキーワードを紹介し、スマート水素ステーションからの充填システムをはじめ、給電機を使えば車両から一般家庭が使う約7日分の電気供給が可能になると語った。

画像では気持ちよく走る姿が紹介されていたが、生活のなかで燃料電池に期待できるトータルな能力が強調されていたのが印象的だった。いわゆる“ウェル トゥ ホイール”(源から車両まで)の効率ではハイブリッドに対して分が悪いとされる燃料電池車だが、可能性はいろいろあるというのが、本田技研の主張のように感じられた。

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Honda CLARITY FUEL CELL

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Honda WANDER STAND

本田技研で感心したのは、パーソナルモビリティへの提案にも力が入っていたことである。リチウムイオン電池で電動モーターを駆動する、電動腰掛けともいえる「ユニカブ」は2013年の東京モーターショーで話題になった個人移動のツールだ。15年の本田技研のブースにおいて、車両の説明にあたる係員たちが、ユニカブに座って移動している光景がたいへんおもしろかった。本田技研では今回、「ワンダーウォーカー」というスクーター型のパーソナルモビリティと、ルーフをついた2人乗り「ワンダースタンド」というコンセプトを出展。

F1マシン「MP4-30」がある傍らで、歩行が難しくなってくる高齢者が増えるであろう近未来の社会。移動の面におけるソリューションが求められている。その提案が、ユニカブ、ワンダーウォーカー、ワンダースタンドだ。自動車メーカーの社会的責任を訴えかける本田技術の姿勢を評価したい。

           
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