ダイムラーAGのスマート部門担当役員 アネット・ヴィンクラー氏 インタビュー|smart
CAR / FEATURES
2014年12月17日

ダイムラーAGのスマート部門担当役員 アネット・ヴィンクラー氏 インタビュー|smart

第42回東京モーターショー2011 来日VIPインタビュー

ダイムラーAGのスマート部門担当役員 アネット・ヴィンクラー氏

次世代モビリティの理想的な形

フランクフルトモーターショーで初披露された「forvision」を東京モーターショーのブースの主力に据えていたスマート。このforvision、誰の目にもすぐにスマートの一族と判別できるものと言えるが、同時に初代、そして2代目とキープコンセプトを貫いてきたこれまでのfortwoと比べると、一段飛躍したような華やかさをも感じることができる。

鮮やかなスーツで会場にあらわれたダイムラーAGのスマート部門担当役員 アネット・ヴィンクラー氏にまずうかがったのは、こうした進化の一方で譲ることのないスマートを定義づけるものとは一体なにかということである。デザインなのか、パッケージングなのか、それともサイズなのだろうか?

Text by SHIMASHITA Yasuhisa
Photo by ARAKAWA Masayuki

シティカーを再定義するというスマートの真髄

「スマートは、最善のモビリティを提供するブランドです。シティカーを再定義するラディカルな特質(姿勢?)こそが、スマートの真髄なのです。

それを定義づけるのが、まずは一目でそれとすぐに判別できるデザイン、スタイリングですね。そしてコンパクトネス。シティカーはコンパクトでなければなりません。

コンパクトなクルマには当然、高い安全性が求められます。スマートはそのために独創のトリディオンセーフティセル構造を採っています。コンパクトながら、高い安全性を有しているのです」

ヴィンクラー氏が最初に挙げた3つの要素は、すべてが互いに密接に結びついている。スマート、おもにfortwoがアイコン足り得ているのは、なによりその“普通の”クルマをデフォルメしたかのような極端に全長の短いサイズと特徴的なデザインの賜物だが、このサイズもデザインも、そもそもトリディオンセーフティセル構造があってこそ実現できたものなのはまちがいない。

どれかひとつの要素が欠けても、fortwoは生まれ得なかったわけだ。

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現行のfortwoファミリー

第42回東京モーターショー2011 来日VIPインタビュー

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次世代モビリティの理想的な形(2)

コンパクトさ以外にスマートたらしめるのに必要な要素は?

「コンパクトで安全性が高い。それだけでは足りません。この小ささながら、室内は広く快適な空間であること。これもスマートにとっては非常に大事なポイントです。これを私たちは“Wao! effect”と呼んでいます。そう、驚きの“Wao!”ですね。

シティカーには修理が容易なこと、そしてコストを抑えられることも大事です。街中を走っていれば小さなアクシデントに遭うことはままあるでしょう。引っ掻き傷などがつくことは少なくないはず。スマートはプラスティック製のボディを用いることで、修理を容易で、低コストにしています。これで保険料だって抑えることができるんですよ。

コストと言えば、燃料消費の少なさ、環境性能の高さもスマートの特徴です。電動モビリティはその究極。ゼロエミッションであることは都市のクオリティ・オブ・ライフを高めることにも繋がるものだと思います」

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そもそもスマートは都市部における、ますます厳しさを増す交通環境をクルマの側から改善できないかというコンセプトから立ち上げられたブランドだ。コンパクトなサイズはそれを象徴するものだが、リペアフレンドリーという要素はなるほど無視できないものだし、燃費、エミッションもかつてよりもさらに重要度を増してきている。究極の姿としてEV化に向かうのは自然なことだろう。

カーボンファイバー強化エポキシ樹脂を用いた軽量ボディ、断熱性を高めて空調の効率を向上させる特殊な断熱材やコーティングなど、forvisionはその点でもあらたなチャレンジをおこなっているモデルである。これらは決してショーカーだけの技術ではなく、あくまで将来の量産車への採用を見据えている。

第42回東京モーターショー2011 来日VIPインタビュー

ダイムラーAGのスマート部門担当役員 アネット・ヴィンクラー氏

次世代モビリティの理想的な形(3)

未来のスマートにとって重要なカギとなるコネクティビティ

「長くなりましたね(笑)。あとふたつです。インディビジュアライゼーション、個性化を欠かすことはできません。いろいろな装備を追加したりテーラーメイドで自分だけの1台をつくることができるのがスマートです。パーソナリティをアピールしたい都市生活者にとっては魅力的な存在だと思います。

そして最後に、シティカーには“Always On”であること、つまりコネクティビティが求められています。都市生活では携帯電話が手放せませんし、クルマで長距離を行こうとすればナビゲーションシステムは今や必須です。つまり常時、情報と接続していることが求められます。スマートはそれを実現していきます」

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ブラバス・テイラーメイドの内装。好みにおうじてシート、ステアリング、ドアパネル、ダッシュボードなどのカラーを自由に組み合わせることができる。

今回のショーでも、スマートのブースには“ブラバス・テーラーメイド”プログラムによってコーディネートされた遊び心に満ちた配色のfortwoが展示され、注目を集めていた。スマートには、そんな風に素材として楽しみたくなるなにかがある。

コネクティビティについて、現在はまだ具体化はしていない。しかし後述するように、今後このブランドにとって大きなカギとなる要素であることはまちがいなさそうだ。

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次世代モビリティの理想的な形(4)

自動車に留まらないスマートが考えるモビリティコンセプトの根幹

「重要なのは、これらの属性がスマートのすべてのプロダクトを貫くものになるというこです。たとえば2012年には北米、そしてヨーロッパで“ebike”を発売しますが、これも一緒です。コンパクトで、ローエミッションで、修理も容易。そしてコネクティビティも備えています。スマートを名乗るからには、これらは必須なのです」

このebikeとは、2010年のパリサロンにて発表された、いわゆる電動アシストつき自転車。アルミ製のボディとスポークを使った車体に出力250wのホイールハブ電動モーターを組み合わせる。スマートフォンを取りつけて、走行データを記録したりナビとして活用することができる。

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ebike

ダイムラーAGのスマート部門担当役員 アネット・ヴィンクラー氏 インタビュー|smart|10
escooter

「言ってみれば、スマートはクルマ以上の存在。モビリティコンセプトそのものなのです。想像してみてください。駐車場に停めたスマートからebikeを取り出して、車両のクレイドルに挿してあったスマートフォンをebikeに移し替えると、ネットワーク機能を継続して使うことができる、といった光景を。これが私たちの考えるモビリティコンセプトの根幹なのです」

そう、スマートの未来にとっては、その数ある定義のなかでも電動モビリティとコネクティビティがとりわけ重要なキーとなってくるようだ。ebikeのほかに、スマートではeScooterも計画中。そして当然、4輪車でも電動化に大きくシフトしていく。forvisionは100パーセントEV。そして現在、日本をふくむ世界でsmart ed(electric drive)を使った実証実験がおこなわれている最中であり、その市販も予定されている。

実証実験などをつうじて、すでにさまざまなデータも蓄積されているはず。スマートがつぎの世代として送り出すEVは、一体どんなかたちとなるのだろう。

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次世代モビリティの理想的な形(5)

短距離移動を考慮した長すぎない航続距離

「その質問を待っていました(笑)。お話したいことは沢山あります。smart edの実証実験では、ユーザーの方がたからなにを改善するべきかについての有意義なフィードバックを受け取っています。

ご存知のとおり、EVのバッテリーは出力にかぎりがあります。forvisionではだいぶ改善されましたが、やはりそれは否定できません。そこでユーザーに聞いたのです。『かぎられた条件のなかで、とくに望む要素はなんですか? スピード? 加速? 航続距離? 』と。

まず航続距離については“現在のままで不満はない”という回答でした。現在の第2世代のsmart edは120kmを走ることができますが、ほとんどのユーザーの毎日の走行距離は、ざっと40km程度。つまり120kmあれば十分なのです。そこにほんの少し上乗せして、つぎの世代では140~150kmを実現します。smart edは特殊な充電プラグなどは使っていませんから、家庭用電源で充電できます。当然、ガソリンスタンドのような所に行く必要はなく、とても自由です。なので140kmあれば、もう十分以上なんです」

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フル4シーターのハッチバックなどであれば、当然ちがう答えが出てきただろう。しかしfortwoは、そもそも短距離用コミューターとしての使われほうが圧倒的多数。それだけに、航続距離はこれでまったく問題にならないというわけだ。つくづくfortwoは、EV向けの1台なのである。

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次世代モビリティの理想的な形(6)

スマートによる走るよろこび

「一方で加速力には、改善を望む声が多数ありました。60km/hまではいいのですが、60km/hから先ではもう少し伸びが欲しい。市街地でも,速度がグッと高まる感触を味わいたいということなのですが、お客様の言葉は私たちにとっては法律ですから(笑)、加速力は強化します。キックダウン機能がつくので、加速するとグッと背中が押される、そんな走りのよろこびを感じられると思います。

最高速度も、第2世代のスマートedは100km/hと、市街地では十分な性能を有しています。ですが時には高速道路を走る、郊外の速度の乗る道を走るというユーザーからは、もう少しトップスピードが欲しいという声がありました。ですので120km/h少々というあたりまでは出せるようにして、走るよろこびの幅を拡げていきたいと思っています。そこまで出さないというひとでも、ポテンシャルがあると解っているだけでリラックスできる部分もありますからね。

こんな風にパワー、トップスピードの面ではユーザーの要求にこたえました。それを競争力ある価格で提供することが求められていると思っています」

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smart roadster

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forfour

実際のところ、ここ日本で使う分には現行のsmart edの加速力やトップスピードでも事足りる。しかし性能に余裕があれば、リラックスに繋がるというのは、なるほどたしかにというところである。

それにしても、これだけ“走りのよろこび”を強調されると、ついsmart roadsterのことを思い出してしまったりもするのだが、果たして今後スマートは、一体どんなラインナップを展開していく予定なのだろうか。

「残念ながらロードスターはいまのところ考えていません。あたらしいラインナップとしては“forfour”、つまり4人乗りのモデルを2014年に導入します。また、将来にはバイクが登場しますよ。これが“forone”ですね。そして“fortwo”が現行車。つぎは“forthree”と言いたいところですが、ここは“forfour”がありますから“大は小を兼ねる”ということで納得していただけませんか?」

           
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