マセラティ グラントゥーリズモ MC ストラダーレ試乗 インカームービーを追加!|MASERATI
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2014年12月17日

マセラティ グラントゥーリズモ MC ストラダーレ試乗 インカームービーを追加!|MASERATI

MASERATI GRANTURISMO MC STRADALE|
マセラティ グラントゥーリズモ MC ストラダーレ

もっともスパルタンな公道用GTに試乗

マセラティ市販車史上最速の時速300km/hオーバーを記録。カーボンセラミックブレーキの採用、軽量化が図られたホイールなどの恩恵により、ベースモデル「グラントゥーリズモ S」より110kgもダイエットした「グラントゥーリズモ MC ストラダーレ」。清水久美子によるインプレッションに先立ち、まずはモータージャーナリスト 渡辺敏史氏による試乗インプレッションをお送りする。

文=渡辺敏史
写真=荒川正幸

レースで培った技術と発想を色濃く反映させた、ロードゴーイングGT

マセラティで思い浮かぶキーワードは洒脱とか伊達とか、そういったところだろうか。いずれにせよ、表立ってアツさを全力発信しているというよりは、そこに一枚ヴェールを被せたような品性を大事にしている、という印象だ。

マセラティは60年代以降、スポーティかつラグジュアリーな市販車の開発に邁進してきたわけだが、それ以前の成り立ちは完全にレースフィールドにあった。とくに50年代のF1での活躍は、彼らの名声を世界的なものとした。さらに遡れば、もっとも美しいレーシングシャシーと言われるバードケージや、自動車史に残るV16スーパーチャージャーといった、圧倒的な技術力とユニークな発想とを融合させたエンジニアリングを展開しつづけてきた。

片や品格と華美とが程よく同居したラグジュアリーGT。片や純然たる速さのために技術を投じたレーシングスポーツ。マセラティとしては、このイメージは適度な距離を保ちながら同居すべきものと考えられているのだろう。そんな背景もあって、彼らのクーペラインであるグラントゥーリズモは、FIAの規定するGT4カテゴリーに準拠したサーキット専用車両も並行して開発され、昨今注目を集めるFIA-GT選手権や、マセラティの主催するワンメイクレースへの参戦を希望するカスタマーに向けて供給されている。

その車輌「MC トロフェオ」のイメージとノウハウを色濃く受け継ぐモデルとして開発されたのが「MCストラダーレ」だ。

もっともスパルタンな公道用GT マセラティ グラントゥーリズモ MC ストラダーレに試乗|MASERATI|02

グラントゥーリズモ MC トロフェオ

この試乗記を書いて頂いた渡辺敏史氏によるインカーリポートムービーとドライバーの視点から撮った映像を追加!

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もっともスパルタンな公道用GTに試乗(2)

マセラティ量産車史上、最速を記録!

MCはマセラティコルセ、すなわちマセラティレーシングの略であり、イタリア語でストリートを意味するストラダーレが示すとおり、本モデルは公道用にもっともスパルタンに仕立てられたグラントゥーリズモということになる。スペックの一端を示せば最高速は300km/hオーバー、0-100km/h加速は4.5秒と、これは同社の量販モデルとして、史上最速を指すものだ。

とはいえ、ロードゴーイングレーサーを名乗るほかのクルマに比すれば、その数字はややマイルドに見えなくもない。マセラティが示すレーシングとストリートとの折衷点は、果たしてどんなものなのか。それは内装の仕立てに表れている。

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ベースモデルを上まわる華やかなインテリア

マセラティのコーポレートカラーであるダークブルーに彩られた試乗車の運転席周りは、ベースとなったグラントゥーリズモSにたいして、滑りの少ないアルカンターラが多用されているが、リアルレザーとのコンビとなるその仕立てに省略はまったくない。110kgの軽量化のために除去されたリアシートにも、トリムとともにアルカンターラが丁寧に貼り込まれ、前部との連続性が保たれている。適度なホールド性を備えながらリクライニングも可能なバケットシートに身を沈めて、爽やかな白いステッチのダッシュボードを見ていると、そこにはレーシングを唱えながら、むしろベースモデルより華やかなんじゃないかと思わせる世界が広がっている。

威勢を感じさせるエキゾーストサウンド

このクルマに搭載される4.7リッターV8をはじめ、現行マセラティのエンジンは、フェラーリのそれと基本設計や製造をおなじくするものだ。MCストラダーレはさらに専用形状のオイルパンやフリクションロス低減の素材加工などがほどこされ、負荷の高い走りにも安定したパワーデリバリーをおこなう。ベースユニット比で10psの出力向上はむしろフィーリングの側に大きな進化がもたらされているとみていいだろう。現に専用設計のエキゾーストから放たれるサウンドはかなりの威勢を感じさせるが、ブリッピングのレスポンスや音質はグラントゥーリズモSに比べると若干洗練されたかな、という印象を受ける。

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そしてキャビンのなかにいれば、エキゾーストサウンドは隣席との会話を著しく妨げるでもなく、適切な音量で聞くことができる。

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もっともスパルタンな公道用GTに試乗(3)

驚くほどしなやかで、上質なライド感

ミッションをエンジンと切り離し後軸側に据えるトランスアクスルの採用で、若干リアヘビーな重量配分となるMCストラダーレ。そのトラクションは強烈だが、これまた専用チューニングとなるピレリPゼロコルサはそれをガッチリと推進力へと変える。そしてグラントゥーリズモS比で10mmの車高減となる専用チューニングのサスは、加減速そしてコーナリング時と、車体の運動姿勢の変化量を確実に抑えているようだ。

それでいながら、街中での取りまわしや高速道路の巡航といった一般的な速度域で、このサスは不快な振動や突き上げをみせることは一切ない。標準装着されるカーボンセラミックブレーキシステムによってバネ下重量は劇的に軽くなり、結果的に乗り心地にも好影響をもたらす。それは何度も経験しているが、そのぶんを差し引いてもロードゴーイングレーサーを名乗るクルマとしては異例なほどアシがしなやかだ。もはやグラントゥーリズモシリーズのなかでもっとも上質なライド感を呈しているのはMCストラダーレ、といっても過言ではない。

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大柄なディメンションを利しての、FRスポーツとしては最上の部類に入るスタビリティの高さはそのままに、この柔軟性に富んだ乗り心地がくわわっている。MCストラダーレはその出自どおり、GTとしてなんら不満のない性能を確保しながら、最大のウリであるレーススペックの運動性をどこまで磨くことができたのか。それを知るにはサーキットに赴くでもなく、走り慣れたワインディングでも充分だった。

取りまわしやすさが充分に考慮された視界のおかげで、日本の山道をも狭いと感じさせないMCストラダーレは、決して路面状況が良いとはいえない場所をスラスラと駆け上がっていく。形容詞は多々あれど、本当にスラスラという言葉がふさわしいと思えるほどその身のこなしはなめらかで軽やかだ。

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もっともスパルタンな公道用GTに試乗(4)

マセラティ製スポーツカーは粋である

そもそもメカニカルグリップがしっかりしているうえにステアリングからの情報量も豊富、そして量は少ないながらもリニアなロール特性など、運転実感がしっかりとフィードバックされる仕付けになっているから、ドライバーは車輌の状態を充分に把握しながら自信をもってコントロールに臨める。この好循環が爽やかな印象へと繋がっているのだろう。イタリアンスーパースポーツ、しかもサーキット直系と聞くイメージとは裏腹な優しさや懐深さ、それがMCストラダーレの走りの土台になっている。

そう、安心の土台。だからこそ、7,000rpmオーバーの高回転域まで一気呵成に吹け上がる刺激的なエンジンの、強烈に過ぎるハイノート・サウンドを、身近な山のなかでも高らかに唱えることができるのだろう。このクルマにはスロットルレスポンスやスタビリティコントロールを可変させるシステムに、サーキット走行を前提とした「レース」モードが備わっているが、ワインディングでもその機能を使いたくなるほど。MCストラダーレはそれほどにシャシーとドライバーとの対話性が高い。おそらくサーキットにもち込めば、車格からは想像できぬその自在性にオーナーは溜飲を下げることになるはずだ。

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もちろん絶対的なタイムでいえば、その上を叩き出すクルマはいくつか挙げられる。が、われわれは眼を吊り上げてサーキットを誰よりも速く走ることを目的にスポーツカーを選ぶわけではない。そこから一歩退いたステージで、充実した時を過ごすためにスポーツカーを選ぶ。そういう、達観した顧客のニーズを満たしてきた自負がMCストラダーレをこのようなキャラクターに仕立てたのだろう。マセラティにかかると、ロードゴーイングレーサーの解釈すら、結果的に粋なものになる。

spec

MASERATI GRANTURISMO MC STRADALE│
マセラティ グラントゥーリズモ MC ストラダーレ

ボディサイズ│全長4,935×全幅1,915×全高1,345mm
ホイールベース│2,940mm
車両重量│1,850kg
エンジン│4.7リッターV型8気筒DOHC4バルブ
最高出力│331kW(450ps)/7,000rpm
最大トルク│510Nm(52.0kgm)/4,750rpm
燃費|14.4ℓ/100km
CO2排出量|337g/km
価格│2112万5000円
※燃費、CO2排出量は英国データに基づく。

マセラティ コールセンター
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