Porsche 911 Story─初代901型
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2015年3月18日

Porsche 911 Story─初代901型

Porsche 911|ポルシェ 911

Porsche 911 Story──初代901型

ポルシェ911がデビューしたのは1963年。いらい、パワーとサイズと環境問題、そしてマーケットでのライバルと戦いながら進化を重ねてきた。7代目が発表されたのを機に、その歴史を振り返る。

文=小川フミオ

レースシーン、一般のマーケット、双方における成功を目ざす

ポルシェが名声を確立したのは、1950年に量産が開始された356だった。50年代をとおして米国でもよく売れたが、やがて市場には競合車が数多く出はじめ、60年代になると、性能と快適性の面で、ともにライバルの後塵を拝するおそれが出てきた。そこで、ポルシェの経営陣は、大きなエンジンを搭載したあたらしいスポーツカーを計画した。それが911(当時は901と名づけられる予定だった)プロジェクトのスタートだった。

プロジェクトのスタート時は、356という2シーターが主力だったため、当初は695と名づけた4シーター案が企画された。

しかし当時ポルシェを率いていたフェリー・ポルシェ(創始者の息子)が2プラス2(現在の911のように補助的に後席があるレイアウト)という、つまり、356の後継となる、次世代の主力モデルへと方針を軌道修正した。フェリーの息子のフェルディナンド・アレクサンダー・ポルシェが、いまにつながるクーペボディをデザインした。すべてはいまから半世紀前、1960年代初頭に決まったのだった。

Porsche 911 Story─初代901型|Porsche|02

ポルシェ 356

あたらしいスポーツカーでポルシェが目ざしたのは、レースでも一般のマーケットでもよい成績を残すこと。そこでエンジンは4気筒でなく、よりスムーズでより力強い6気筒が採用された。リアエンジン、リアドライブというレイアウトは、356のあとを継ぐモデルとして、わりと自然に決定されたようだ。

ポルシェはこうして開発した「901」を1963年秋のフランクフルト国際自動車ショーに展示。そののち911に車名変更し、翌1964年8月から顧客へのデリバリーを開始した。901はコードネームとして残り、次世代の930、つぎの964、さらに993……と、世界中のポルシェファンにとってモデル区別のために定着している。

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Porsche 911 Story─初代901型|Porsche|04

顧客はすぐに、スタイリッシュで軽快でパワーもある911を受けいれた。しかし、リアに比較的大きな2リッター6気筒エンジンを搭載する911は、開発ドライバーとシャシーとハンドリング設計者にとって、さまざまな課題を投げかけた。とくにコーナリングでの挙動をできるだけニュートラルでコントロールしやすいものにすることに、ポルシェの設計者は骨を折った。なかにはバンパーにウェイトをいれるという苦肉の策もあったようだが、やがて1969年にホイールベースを延長することで、カーブを曲がるさいに車両が内側に入っていく傾向を示すオーバーステア特性はだいぶ改善された。

こうして、ポルシェ911は、パワーと環境とライバルとの競争という、種々の条件が渦巻く、マーケットにこぎ出したのだった。

930型につづく。

           
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