Cars in the Films Part.2──スリラー篇

Cars in the Films Part.2──スリラー篇

映画のなかのクルマたち

Cars in the Films Part.2──スリラー篇(2)

山口幸一推薦『ディーバ』

静寂な森にたたずむホワイトのシトロエン 11CV

山口 知日派でもあるジャン=ジャック・ベネックスが監督した、ちょっとふしぎなサスペンス映画が『ディーバ』(1981年)で、はじめて観ていらい、ずっと心に残る作品です。ストーリーは、自分の録音を発表しないオペラのソプラノ歌手(ディーバ)に恋をした男の子が、犯罪組織の秘密を録音したテープを入手してしまい、組織に追われるようになるというものです。

小川 当時から話題になりましたが、ベネックス監督のトリビアリズムが横溢していますよね。主人公の男の子は、ロールス・ロイスの「スピリット・オブ・エクスタシー」と呼ばれる女性像をつけたベスパに乗り、GPAのヘルメットにベルスタッフのライディングコートを着、一流の録音機器メーカー ナグラのテープレコーダーをもち……といったぐあいで。

山口 そして出てくるクルマがホワイトカラーのシトロエン 11CV。オリジナルは1930年代までさかのぼるこのクルマは、当時、ほかにさきがけて前輪駆動方式を採用したことで歴史に残っています。さらに、車体は低く、ボディ側面に足を乗せるステップをもたないデザインとともに、スタイリッシュなんですよね。その11CVが森のなかで美しく撮影されているのも、この映画をとても印象ぶかくしています。森でいうとイブ・モンタンを起用してベネックスが撮ったロードムービー「IP5」(1992年)でも印象的な場面があります。美しい映像とモノ。ベネックスの特徴は処女作『ディーバ』ですでに十分に出ていたんですね。

映画のなかのクルマたち──スリラー篇|07

主人公の男の子、ジュールが乗るべスパには、廃車から取りはずしたロールス・ロイスのアイコン、スピリット・オブ・エクスタシーがつけられている。

小川 東京に取材して『OTAKU』(1993年)というドキュメンタリーを撮っただけのことはある、というわけですね。山口さんはたしか、ベネックスと一緒にクルマに乗って首都高速を走ったことがあるのでは?

山口 はい。ベネックスはカタカナが読めて、ちょうど前を「カーフィルム」と書いた商用バンが走っていたのを発見したので、「なに、なに?」と興奮していました。

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ディーバことシンシア・ホーキンズの歌声をナグラ製のテープレコーダーで録った音を聴きかえすシーン。型番は1972年製の「IV-S」。

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シトロエン 11CV

小川 カーフィルムって当時はクルマの窓に貼る偏光フィルムのことでしたね。

山口 英語だと自動車映画ってことでしょうね。だからクルマ好き映画監督のベネックスは勘ちがいしてものすごく興味を示したのでしょう。

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ディーバ(製作30周年記念 HDリマスター・エディション)

キャスト|ウィルヘルメニア・フェルナンデス
フレデリック・アンドレイ
リシェール・ボーランジェ

DVD販売元|ハピネット
価格|3990円
発売日|2010年09月02日(発売中)
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