Cars in the Films Part.2──スリラー篇

Cars in the Films Part.2──スリラー篇

映画のなかのクルマたち

Cars in the Films Part.2──スリラー篇

ジャーナリスト 小川フミオ氏とOPENERS CARカテゴリー担当 山口幸一が、自動車の出演が印象的な映画を紹介する『Cars in the Films』。第2回はスリラー。スリラーというと、日本では怪奇もの? と思われがちだが、英語の表現では“ドキドキ”を意味する、いわゆるミステリー。小川氏曰く、「クルマとものすごく相性がいいジャンル」で、たとえばエスピオネージ(スパイ)ものだったら、諜報部員が目的を達成するのにこのクルマがあったからこそ、とか。

小川フミオ氏推薦『ジャッカルの日』
史実を知りつつも、手に汗にぎるストーリー

小川 フレデリック・フォーサイスの原作を、名画『地上より永遠に』『わが命つきるとも』『ジュリア』などで知られるフレッド・ジンネマンが監督した一級のスパイ映画が『ジャッカルの日』(1971年)です。1960年代、当時のシャルル・ド・ゴール大統領暗殺計画を題材にした作品で、ド・ゴールは暗殺されなかったという史実を知っていても手に汗にぎるストーリー展開です。

山口 デヴィット・ボウイのようなハンサムなエドワード・フォックスが「ジャッカル」というコードネームの暗殺者を演じているのが、かっこいいですね。ジャッカルは、モナコをスタートに、陸路でパリをめざし、そこでド・ゴールを射撃しようとする。そのときクルマを次つぎと乗り換えていくんですね。

小川 最初はアルファロメオ ジュリエッタ スパイダー。途中でボディカラーをブルーに染めた直後に、前方からきたプジョー404を避けようとしてクラッシュしてしまい、そのクルマを盗む。つぎにルノー フロリドといった具合で。ジュリエッタ スパイダーに乗っているさい、走行中に背後からソフトトップを片手で引き出して幌をかける場面があります。はじめてあの映画を観たとき「おもしろい構造だなあ」と感心しましたが、あれ、本当にあんなことできたのかなあ。

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プジョー 404

映画のなかのクルマたち──スリラー篇|02_02

ルノー フロリド

山口 マニアックな視点ですね(笑)。ジュリエッタのソフトトップは、たしかシートバックをちゃんと前に倒さないと引き出せないのでは。でも演出しているひとは、観客に与える効果をちゃんとわきまえていますね。おおっとなる。

小川 そうですねー。クルマのこと、わかっていますよね。そういえばブライアン・デパーマ監督の『スカーフェイス』というギャング映画では、主人公演じるアル・パチーノがポルシェ 928に乗っていて、夜、クルマに乗り込んでライトを点灯すると、丸い巨大なヘッドランプがむくっと起き上がる。映画館では観客席から「おおっ!」と感心する声が上がりました。喋りだけだと、わかっていただけないでしょうが、ちょっと変わったデザインなんですよね。クルマのメカニズムを小道具としてうまく使っていました。

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ポルシェ 928

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シトロエン DS19

クルマの速度感に名スパイの判断が負ける

山口 『ジャッカルの日』では、すでに自分の存在がフランス警察にばれてしまっているのを知ったジャッカルが、三叉路で、フランスへ入国するか、イタリアへ行くか、迷う場面があります。彼はあえてフランスを選んだ。死地に赴く覚悟でしょうか。そのときクルマだから判断は一瞬だった。徒歩とか電車だったら、もっと情報を仕入れて、慎重な選択をしただろうに。クルマの速度感に名スパイの判断が負けた瞬間。

小川 当時エリゼ宮で使っていたのはシトロエン DS19だったので、黒塗りがふんだんに登場するのも、フランス車好きには楽しいですね。あのカエルのような顔つきのクルマが大統領府に並んでいるのを観ると、フランスってユニークな国だなあと思います。

映画のなかのクルマたち──スリラー篇|05

ジャッカルの日

キャスト|エドワード・フォックス
マイケル・ロンズデール
デルフィーヌ・セイリグ

DVD発売元|ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン
価格|1,500円
発売日|2010年05月12日(発売中)