古きシトロエンDSでめぐるパリ|Citroen

古きシトロエンDSでめぐるパリ|Citroen

CAR FEATURES

DS Drive|DS ドライブ

古きシトロエンDSでめぐるパリ (2)

路面の凹凸をほとんど感じない魔法の絨毯

DSワールドの前に停められたDSは、ロードクリアランスがほとんどゼロというぐらい、低い車高が印象的だった。しかしドライバーがエンジンを始動させると、やにわにリアがぐぐっと持ち上がり、続いてノーズが持ち上がり、通常のクルマと同じ車高になった。油圧ポンプが駆動されてサスペンションが機能しはじめたからなのだ。

全長4.8メートルの車体だけあって、後席は意外なほど広い。レッグスペースもヘッドルームも余裕がある。前席のシートバックがかなり低いため、視覚的な印象も強いのかもしれない。映画「個人生活」(1974年)で政治家役を務めたアラン・ドロンは、前席シートバックに取り付けられた電話をしょっちゅう使っていて、当時、小学生だった僕は「クルマで電話かあ」とびっくりしたのを思い出した。

Citroen DS|シトロエン DS
Citroen DS|シトロエン DS

アラン・ドロンを気取って、ソフトで気持ちよい座り心地のシートに座っていると、乗り心地はかなりよい。僕はこれまで何度もさまざまなDSを操縦したことがあるが、ファブリックシートの後席に座ったことはなかったかもしれない。魔法の絨毯があったら、こんなふうに、路面の凹凸をほとんど感じない乗り心地かもしれないとおもった。

「まずエッフェル塔でも観ましょうか」とドライバーが言う。まだ20代だというから、彼が生まれた時、シトロエンは「XM」(89年)を出していたかもしれない。隔世の感がある。DSをドライブしての感想をきくと、「ほかのクルマと全然ちがっていておもしろい」と言う。油圧アシストのついたステアリングは握る力を緩めると勝手に直進位置に戻るし、セミオートマチックの変速機はトルクをかけすぎてからシフトアップするとぎくしゃくする。しかし慣れれば、たしかに楽ちんで「おもしろい」と言える操縦性なのだ。

ふんわり進み、エッフェル塔前で写真を撮っていると、観光客が写真を撮りに集まってきた。中国人らしき人も多い。この時代、中国では西側からのクルマの輸入はストップしていたはずなので、DSがいかに有名でも、存在は知られていないとおもうのだけれど、ちらりと見て、おもしろいスタイルだとわかるのだろう。

頭が大きくてリアにむかってすぼまっていく、魚のようなシェイプも、このクルマがデビューして60年のあいだ、真似するものがなかったから、風化もしていないのだ。

Citroen DS|シトロエン DS