試乗、ボクスターGTS&ケイマンGTS|Porsche
CAR / IMPRESSION
2015年7月13日

試乗、ボクスターGTS&ケイマンGTS|Porsche

Porsche Boxster GTS|ポルシェ ボクスター GTS
Porsche Cayman GTS|ポルシェ ケイマン GTS

Sとはちがう、その価値とは

試乗、ボクスターGTS&ケイマンGTS

「ボクスターS」「ケイマンS」よりもひとまわりパワフルなエンジンとスポーティな装備が与えられた「ボクスターGTS」と「ケイマンGTS」。大台にも手が届きそうな価格設定のなかで、この2台を選ぶ価値はどこにあるのか。スペインでおこなわれた国際試乗会、そして日本での試乗を通じて、大谷達也氏がリポート。

Text by OTANI TasuyaPhotographs by ARAKAWA Masayuki

ハンドリングと乗り心地のバランスはS以上

ケイマンに「ケイマンGT4」が、そしてボクスターに「ボクスター スパイダー」が追加されたことで、「GTS」が両モデルの最強グレードでなくなったのは事実だけれど、その魅力的なポジションはいささかも変わっていないと思う。そんなGTSを端的に説明するならば、パフォーマンス、装備、そして価格の絶妙なバランスに最大の魅力があるといえる。

たとえばエンジンは、ボクスター/ケイマンの「S」よりも15ps大きな330ps/340psにパワーアップ。そして装備面ではPASM、スポーツクロノパッケージ、20インチホイール、スポーツシートなどが標準となる。じつは、そのほかにも細々としたちがいはあるのだけれど、ここに挙げたものだけでもオプション総額は170万8,000円に上る。

Porsche Boxster GTS|ポルシェ ボクスター GTS

Porsche Boxster GTS

Porsche Cayman GTS|ポルシェ ケイマン GTS

Porsche Cayman GTS

ところが、Sとの差額はボクスターの場合で112万円、ケイマンの場合でも120万円しかないのだ。つまり、50万円以上もお得なのだが、ここには内外装の細かな変更やエンジンの15psパワーアップにかんするコストは含まれていない。これだけでも、SではなくGTSを選ぶ理由はじゅうぶんにあるというものだ。

けれども、実際に乗ってみるとここにリストアップしたオプション以上のちがいが感じられる。

たとえばGTSはSよりも1インチ大きな20インチホイールを履いているにもかかわらず、路面から伝わるゴツゴツ感はなぜかGTSのほうが軽く感じられる。それでいてハンドリングの鋭さはSよりも上。つまり、ハンドリングと乗り心地のバランスはGTSがSをはっきりと凌いでいるのだ。

ちなみに、両モデルの兄貴分にあたる「911カレラGTS」はワイドトレッドを採用しているので、「911カレラS」より優れたハンドリングと乗り心地を実現できているのはよくわかるのだが、ボクスター/ケイマンの場合はSとGTSでトレッドやホイール幅は同一。

にもかかわらずGTSがひとクラス上の実力を備えていることは正直、謎なのだけれど、これは事実だから仕方ない。ひょっとしたらダンパーやブッシュのチューニングをより念入りにおこなっているのかもしれない。

Porsche Cayman GTS|ポルシェ ケイマン GTS

Porsche Cayman GTS

Porsche Boxster GTS|ポルシェ ボクスター GTS
Porsche Cayman GTS|ポルシェ ケイマン GTS

Sとはちがう、その価値とは

試乗、ボクスターGTS&ケイマンGTS (2)

性格付けのことなるボクスターとケイマン

エンジンの魅力も明らかにSをしのぐ。とくにトップエンドのストレスのない回り方は鳥肌が立ちそうになるほど。もちろん「911GT3」には到底及ばないけれど、それとちかい回転フィールが味わえるのだ。

エグゾーストサウンドも迫力じゅうぶん。それどころか、“スポーツ+”を選ぶとスロットルオフでパリパリパリなんて音まで響かせてドライバーを驚かせる。スポーツモデルといえども静かなほうが好きな私は軽く赤面してしまうほどの音量なのである。

Porsche Boxster GTS|ポルシェ ボクスター GTS

Porsche Boxster GTS

Porsche Cayman GTS|ポルシェ ケイマン GTS

Porsche Cayman GTS

もうひとつ興味深いと思ったのが、おなじGTSでもボクスターとケイマンで微妙にハンドリングがことなること。どちらかといえばボクスターのほうがマイルドで乗り心地も優しく、ケイマンはよくいえばさらにスポーティで、ネガティブに表現するとややスパルタンに感じられる。

なるほど、これはボクスターとケイマンのボディタイプを考えれば当然とも思える設定だが、個人的にはボクスターの上質な乗り心地に惚れ込んでしまったことを申し添えておきたい。

Porsche Boxster GTS|ポルシェ ボクスター GTS
Porsche Cayman GTS|ポルシェ ケイマン GTS

Sとはちがう、その価値とは

試乗、ボクスターGTS&ケイマンGTS (3)

気になる価格差

というわけで、このクラスのスポーツカーとしては満点にちかいボクスター/ケイマンのGTSなのだが、スペイン・マラガ周辺でおこなわれたGTSモデルの国際試乗会では、路面の不整でときおり荷重が抜け気味になることがあった。この影響でタイヤのグリップが低下し、コーナーで何度かオーバーステアを示したのである。

もちろん、そんなときでもコントロールは容易だったし、そもそも過酷なサーキット走行を繰り返したおかげでタイヤの摩耗が進んでいたことがその最大の要因と推測されるのだが、こんなときでもサスペンションストロークの豊かな911であればもっとしっかりと路面を捉えてくれていただろうと思わずにはいられなかったのもまた事実である

もうひとつ、心をよぎったのは911との価格差だった。いくらコストパフォーマンスが高いとはいえ、ボクスターもケイマンもGTSは1,000万円ちかい値付けとなる。だとすれば、あと200万円出せば911カレラが手に入る。

Porsche Boxster GTS|ポルシェ ボクスター GTS

Porsche Boxster GTS

もちろん、それは最廉価版の911でスポーティ度は薄まるものの、911のしっかりとしたボディと豊かなホイールストロークを誇るサスペンションは健在。ひょっとするとスポーツ派には歓迎されないかもしれない大きめの姿勢変化にしても、荷重移動を利用して積極的にステア特性をコントロールしたいと思う向きには最高のプレゼントとなるだろう。

Porsche Cayman GTS|ポルシェ ケイマン GTS

Porsche Cayman GTS

Porsche Cayman GTS|ポルシェ ケイマン GTS

Porsche Cayman GTS

ただし、「いや、待てよ、そこからあと〇〇万円出せば ―― と思うと、もうキリがない。なぜなら、余計にお金を出した分、確実にいいものが手に入るのがポルシェなのだから。

したがって、基本的には自分の予算と好みをしっかり吟味してどのモデルにするかを選んでいただきたいのだが、ボクスターSもしくはケイマンSの購入を検討中なのであれば、あと120万円ほどをなんとか捻出してGTSを選んだほうがあとあと後悔しなくて済むことだけはまちがいないだろう。

080507_eac_spec
Porsche Boxster GTS|ポルシェ ボクスター GTS
ボディサイズ|全長 4,405 × 全幅 1,800 × 全高 1,270 mm
ホイールベース|2,475 mm
エンジン|3,436 cc 水平対向6気筒 直噴DOHC
最高出力| 243 kW(330 ps)
最大トルク|370 Nm/ 4,500 - 5,800 rpm
圧縮比|12.5
トランスミッション|6段MT / 7段AT(PDK)
駆動方式|MR
タイヤ 前/後|235/35R20 / 265/35R20
0-100km/h加速|(6段MT)5.0秒   (7段PDK)4.9秒(スポーツプラス4.7秒)
最高速度|(6段MT)281 km/h   (7段PDK)279 km/h
トランク容量|150リットル(フロント)+130リットル(リア)
価格|(6段MT)902万円   (7段PDK)966万円

Porsche Cayman GTS|ポルシェ ケイマン GTS
ボディサイズ|全長 4,405 × 全幅 1,800 × 全高 1,285 mm
ホイールベース|2,475 mm
エンジン|3,436 cc 水平対向6気筒 直噴DOHC
最高出力| 250 kW(340 ps)
最大トルク|380 Nm/ 4,750 - 5,800 rpm
圧縮比|12.5
トランスミッション|6段MT / 7段AT(PDK)
駆動方式|MR
タイヤ 前/後|235/35R20 / 265/35R20
0-100km/h加速|(6段MT)4.9秒   (7段PDK)4.8秒
最高速度|(6段MT)285 km/h   (7段PDK)283 km/h
トランク容量|150リットル(フロント)+275リットル(リア)
価格|(6段MT)915万円   (7段PDK)979万円

ポルシェ カスタマーケアセンター
free150120-846-911

           
Photo Gallery