戸田恵子|『どれみふぁワンダーランド』最終回を迎えて
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2015年3月13日

戸田恵子|『どれみふぁワンダーランド』最終回を迎えて

戸田恵子|NHK BS2にて2年間放送

『どれみふぁワンダーランド』最終回を迎えて(1)

2009年4月からNHK BS2で放送がはじまった『どれみふぁワンダーランド』は、本年3月25日の総集編O.Aをもって最終回となりました。あっという間の2年間。本当にたくさんのことを勉強させていただきました。大好きだった学校を無理矢理卒業させられる──そんな気分です(泣)。

文=戸田恵子(OPENERS)

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よりよいものをと毎回貪欲でした

「どれみふぁワンダーランド」は作曲家の宮川彬良さんを中心に、RAG FAIRと私で繰り広げる音楽バラエティ番組です。第1回の放送前に1本のパイロット版を作り、それが好評でレギュラー化となりました。バラエティとひと口に言っても、手間もかかる、時間もかかる、それはそれは大変な作業でして……。しかしそれをじつに丁寧にやってのけたと思うのです。「NHKならでは!」と、言っていいでしょう(笑)。

戸田恵子|『どれみふぁワンダーランド』最終回を迎えて 001

なんと言っても私は“歌う”ということに、あるいは“歌う場がある”ということにあらためて感謝しています。どれだけの楽曲に触れたでしょう、どれだけの知らない歌に挑戦したでしょう──。番組では歌いたい歌を歌うとか、得意な歌だけを歌うとかではなく、宮川先生から課題曲がわたされます。懐メロ、ポップス、ロック、ジャズ、etc……。バラエティ豊かなそれらの曲が、オリジナルとは異なる宮川流にアレンジされてくる。それがまた雰囲気をガラリと変え、そしてかなり難しい……。

番組づくりは、まずバンドセッション曲が決まったら音録り、ハモリの確認、etc……歌リハーサルがあります。ブログでもよく紹介した彬良さんのピアノをRAG FAIRのみんなと私とで囲むあの感じです。

ここでまず第一段階の歌練をします。彬良さんからは楽曲の音の構造や、歌うさいのグル―ヴなどを教わります。皆それぞれの録音機器に録って持ち帰り、あとは本番当日まで自主練。思い出されるのは番組がはじまった当初、ミュージカル『ザ・ヒットパレード』の公演中で、私とRAG FAIRのメンバーははやめに楽屋に入って練習したり、マチネとソワレのあいだにも練習したりしていました。大変だったけどすごく楽しかった。すっかり音のマジックにかかっていました。

収録当日は朝からバンドと初合わせのリハーサル。そこでバンドともベクトルを合わせていきます。彬良さんはいついかなるときも音に対して真摯である。バンドにも、私たちにも、決して妥協はしません。本番テイクを撮ってみて、バンドもふくめ全員でプレビューを観ることがよくありました。それでOKを出したり、リテイクをしたり。もうワンテイク撮り直しと言われたとしても、誰も嫌な顔ひとつ見せず、よりよいものをと毎回貪欲でした。

正しく音を出したり歌ったりすることはとても大事だけど、それだけでなく、さまざまなジャンルのテイストやグル―ヴを大切にすることを学びました。

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戸田恵子|NHK BS2にて2年間放送

『どれみふぁワンダーランド』最終回を迎えて(2)

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“音楽”という二文字でこんなに話が弾む

「とりとめもない話」では本当にとりとめもない話をしてきました(笑)。しかし驚くべきは、すべて音楽や音にかんする話ばかりだということです。それだけでよく話ができるものだなと。本当に奥が深いし、ここでも新発見がたくさんあり、とくに私はクラシカルなことに弱い。まだまだ勉強することがある! と思いました。

あとはそれぞれのコーナーがあり、それは個々に練習。宮川彬良さんには「深読み」のコーナーが、RAG FAIRには歌コントが(私も音楽仕分けで一度だけ参加しました。メッチャ楽しかったです)。コントといってもみんな土台の歌と音楽がしっかりしている。それが贅たくだと思うんですよね。「匠」のコーナーも毎回見応えがありました。

さて、私はライブハウス「OKEI」の女主人、恵子ママの役をいただきました。この場が私にとって、またまた大きな財産となりました。最初はゲストの方から話をうまく引き出すことができるのかがとても不安でしたが、そんな心配をよそにゲストの皆さんはあたたかく、そして興味深いお話ばかりで案ずるより産むが易しでした。

このコーナーもゲストの方たちの「音楽にまつわる話」というくくりがすてきだった。

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恵子ママもたくさんの歌を歌わせてもらいました。知らない歌も数々。歌ったことのない歌も数々。ゲストの方の想い出を壊してはならない……1曲、1曲、心を込めて歌わせていただきました。むずかしい歌もいっぱいありましたけどね(笑)。「OKEI」でのバンド編成は宮川彬良さんのピアノ1本だったり、プラス ウッドベース、プラス ギターだけなど、シンプルな編成で歌うのは緊張する。番組冒頭でのバンドセッション曲もそうですが、原曲とアレンジが変わっていて、それが宮川流と言いますか、“どれワン”流と言いますか。これがまたたまらなくむずかしくもあり、楽しみでもありました。

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おかげさまでゲストの方は第1回の伊東四朗さんをはじめ、ほとんどがお付き合いのある方だったので、気兼ねなく、本当に楽しい会話ができました。ときどき初対面の方もいらして緊張もしましたが、“音楽”という二文字で初顔のひとでもこんなに話が弾むものだと驚きでした。極度の緊張は二度! すぎやまこういち先生の前で『伝説巨神イデオン』のエンディングテーマ『コスモスに君と』を歌ったときと、都倉俊一先生の前で『五番街のマリーへ』を歌ったときです。

目の前に作曲者がいるというのは──もう心臓バクバクものでした! “作曲者の前でうまく歌いたい”なんて力んじゃって、結果「リハーサルのほうがよかったな~」なんてことに(笑)。でもおふたりとも歌い終えたあとは誉めてくださいました。お優しいです。

番組の打ち上げも終わり、オンエアは総集編も放送が終わり、正直気分はボーっとしちゃってます。私は元来あたらしいもの好きだったりするので、ひとつの番組が終わって即つぎに向かうことは嫌いじゃないのですが、『どれみふぁワンダーランド』はずーっと通っていたかった学校です。独学で勉強するのは本当にむずかしいことですもんね。しかし嘆いてばかりもいられません。2年間“どれワン”学校で学んだことを活かし、さらに歌の仕事にも精進していくつもりです。現在は活動を休止しているRAG FAIRともまた一緒に歌いたいですね。『どれみふぁワンダーランド』本当にたくさんの御支援ありがとうございました。


東日本大震災の被災者の方々に心よりお見舞い申し上げます。
戸田恵子


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