連載・藤原美智子 2015年5月|幸せな結婚をつづけるために必要なこと
BEAUTY / THE EXPERTS
2015年5月26日

連載・藤原美智子 2015年5月|幸せな結婚をつづけるために必要なこと

連載・藤原美智子 2015年5月|これから結婚するひとに向けて送る言葉

幸せな結婚をつづけるために必要なこと

先日、偶然、ある素敵な詩に出逢いました。それは詩人・吉野宏さんの「祝婚歌」という詩です。ネットで検索したら、たくさんのひとがこの詩を取り上げていて、吉野さんご自身が「この詩は誰が作ったかわからない民謡のようなものだから、著者権というのはない」というようなことを語っている記事を読んだので、私もここで紹介させてもらいたいと思います。

Photographs&Text by FUJIWARA Michiko

「祝婚歌」 吉野宏

二人が睦まじくいるためには
愚かでいるほうがいい
立派すぎないほうがいい
立派すぎることは
長持ちしないことだと気付いているほうがいい
完璧をめざさないほうがいい
完璧なんて不自然なことだと
うそぶいているほうがいい
二人のうちどちらかが
ふざけているほうがいい
ずっこけているほうがいい
互いに非難することがあっても
非難できる資格が自分にあったかどうか
あとで
疑わしくなるほうがいい
正しいことを言うときは
少しひかえめにするほうがいい
正しいことを言うときは
相手を傷つけやすいものだと
気付いているほうがいい
立派でありたいとか
正しくありたいとかという
無理な緊張には
色目を使わず
ゆったり ゆたかに
光を浴びているほうがいい
健康で 風に吹かれながら
生きていることのなつかしさに
ふと 胸が熱くなる
そんな日があってもいい
そして
なぜ胸が熱くなるのか
黙っていても
二人にはわかるのであってほしい

既婚者は納得、未婚のひとにはピンとこない?

この詩は詩集(『二人が睦まじくいるためには』吉野弘著 童話社)はもちろん、ネットやテレビでも取り上げられて広まっていき、今では多くのひとが結婚式でお祝いの言葉として朗読されたり、結婚式のパンフレットにも使われたりしているそうです。とはいえ、結婚していないひとは、この詩を読んでもピンとはこないかもしれませんね。でも既婚者には「そうそう。結婚で大事なのは、こういうことだよね」と納得するひとが多いのではないかしら。だからこそ、これから結婚するひとに向けて送る言葉として選ばれているのでしょう。

たぶん私も結婚していないときに、この詩を読んだとしても「えー、なんで愚かでいるほうがいいの~?」などと憤慨しただけかも。今では冗談で「“結婚する前は両目を開いて相手を観察して、結婚したら片目を閉じろ”と言うけれど、私は両目を閉じてる」などと言うことがあるのですが、「それぐらいでちょうど良い」と思うようになりました。たぶん相手(夫)もおなじように思っていると思うのですが(笑)。でも、そんなふうに思えるようになってきたのは結婚して3年くらい経ってから。それまでは片目も閉じられなかった(今でもときどき、カッと両目を見開くことはあるんですけれど)。

ジューンブライドの二人に幸多からんことを!

誰にも得意や不得意、長所や欠点があるものだけど、結婚した当初は相手の不得意や欠点のほうに目がいっていた。でも考えてみたら、自分にだって不得意も欠点もある(たくさんね)。それを補い合うのが夫婦というものなのかな。自分の不得意や欠点を棚に上げて、相手のそれに両目を見開いてもしょうがないよねーと思うようになってきた。そして少しずつ、自分が大事にしていることや核にしていること以外は、「まっ、いいか」と思えるようになってきた。つまり私の場合、相手を受け入れられる余裕が出てくるまで3年かかったということでしょうか。

誤解されないように補足すると、この「まっ、いいか」は決して諦めではないということ。なぜなら、自分がそのように受け入れると、相手も受け入れてくれるようになる。すると自分に、より受け入れようとする気持ちが湧いてくる――。そうした心の機微に気づいてのことなので、前向きな「まっ、いいか」ということなんです。もちろんマリアさまのように、相手が受け入れてくれなくても愛を与えられるひとはいると思いますが、私はまだまだ。それに我が家は相手が先に受け入れ態勢を示してくれたので、私がそれに乗っかれたという感じなんです。

そして今では、私はお笑いの“ボケとツッコミ”のボケ担当。安心して思う存分にボケを発揮している私を受け入れてくれている(横目にですが)夫に感謝! という次第です。愚かな自分を相手が受け入れてくれなければ、仲睦まじい二人にはなれないですものね。ジューンブライドを予定されているひと(もちろん未婚、既婚問わずすべてのひとにですが)はぜひ、「祝婚歌」を心の片隅に留めておいて。自分のためにも、これからの二人のためにも。どうぞ、お幸せに!

           
Photo Gallery