岡部美代治|Vol.17 「育毛対策」
Beauty
2015年1月26日

岡部美代治|Vol.17 「育毛対策」

vol.17 育毛対策 (1)

大手化粧品メーカーの研究部門と商品開発部門にて、数々の優秀コスメ誕生にかかわってきた岡部美代冶さん。女性の美に対するあくなき探求心と鋭い視点、そして研究者ゆえの造詣の深さを活かして、さまざまな「美容の疑問」を、科学的見地から解説していただきます。

文=OPENERS
語り=岡部美代冶
写真=JAMANDFIX

「育毛」と言うと、以前は“男性の悩み”というイメージが強かったように思いますが、薄毛にかんしては女性も気にしているひとが多いようです。まずは髪の知識を身につけ、正しいケアをしましょう。髪のメカニズムや抜け毛の原因、そして対策を教えてもらいました。

髪のメカニズム

Q.髪のメカニズムは男女でちがいがあるのですか?

頭髪の抜け毛は人間の毛の生まれ変わりのリズムが揃っていませんので、男女を問わず毎日発生しています。季節によってもちがいますが、1日の抜け毛は約150本と言われていて、髪の寿命は男性が2~3年、女性で3~4年です。

Q.脱毛症の症状は男女共通ですか?

女性の場合は「円系脱毛症」以外で“はげる”ということはないのですが、加齢により頭髪の1本1本が細くなるために、密度が少なくなり頭皮が透けて見えるという症状が挙げられます。男性の場合、早いひとは18歳前後から脱毛がはじまることもある一方、30代後半から急激な脱毛が進むこともあります。たとえるなら、女性は“森”が“林”になってしまう。男性の場合は、“森”が“砂漠”になってしまう。それが、女性と男性の大きなちがいです。

Q.原因にもちがいはあるのですか?

男性型の脱毛は、遺伝と男性ホルモンの影響によるものです。男性ホルモンといえば体毛を成長させる働きのあるホルモンですが、頭髪に限っては脱毛作用のあるホルモンなのです。男性ホルモンが強く働くために、頭皮の皮脂線が活発になり、皮脂線、毛穴が大きくなって毛根部が委縮してしまうんですね。それに対して、女性の場合の脱毛は遺伝要素よりも、栄養やストレスが大きな原因と言われています。それと、薄くなったことを気にしすぎてしまうことも原因のひとつです。心配すること自体が髪にとっては良くないですし、洗うことで髪が抜けるのを気にしてしまって、頭皮に触れることを恐れてしまうんですね。むしろ、しっかりマッサージをしてあげるべきなのですが。きちんと頭皮が洗浄されていない、マッサージもされていないという状況は、毛穴がつまりやすく、血液循環も悪くなり逆効果です。


vol.17 育毛対策 (2)

予防に勝る抜け毛対策はない

Q.抜け毛を防ぐ方法はあるのですか?

一番は、洗髪とトリートメントの正しいヘアケアです。しっかりと泡立てて、指の腹で細かく頭をもみ洗いすること。そしてすすぎをしっかりすること。頭皮に刺激を与えるのが恐いと思ってしまうと、洗髪が充分にできなくなってしまいがちですが、しっかり洗うのが基本です。正しい洗髪をすれば、ある程度は現状維持ができます。そしてマッサージ。じつは、薄毛のひとと普通のひとは毛穴の数はあまり変わらないんです。なので、1本1本を太くすることがポイントになります。それと、実証はされていませんが、開き直ると抜け毛が止まるというデータもありますし、多くの臨床医はストレスとの関係を指摘していますので、開き直りも大切なのではないでしょうか。そういう意味では、自分に合った育毛剤を使うことは、安心感を得られるので効果的と言えます。

Q.育毛剤を使用しはじめるタイミングというのはいつですか?

早ければ早いほどいいと思います。というのも、育毛剤の成分と言うのは、大きく分けて髪の細胞に必要な栄養を送り込むために血行を促進するものと、男性ホルモンの働きを抑えるものの2種類があります。主流となっている成分としては、血行促進効果のある「ミノキシジル」や、男性ホルモンの働きを抑制する「エストラジオール」や女性ホルモン作用をもつ成分などです。それと、消炎成分として使用されている「グリチルリチン酸塩」や、毛髪の栄養となる毛母細胞の分裂を促進する「パントテン酸」。使って悪いことは何もないですし、気になる前に使いはじめるのをお薦めします。いずれにしても、はっきりと分かっているのは、予防に勝る抜け毛対策はないということですね。

           
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